薬局で売られている薬品のパッケージには、よく見ると「医薬品」とか「医薬部外品」なんて記載があります。
これは薬事法でその薬効があると認められたものに対する分類なのですが、それぞれどういった違いがあるのかについて簡単に説明します。
医薬部外品について
薬事法での医薬部外品は「人体に対する影響が緩和なもの」とあります。
つまり一般的に言って、良いに悪いにかかわらず「医薬品」より体への影響がすくないものが「医薬部外品」です。
医薬品で成分の強いものや、肌質に合わないものは、頭皮がかぶれたり副作用が発生する場合があります。その点、医薬部外品は副作用はほとんどなく、比較的安全に使用できます。
育毛トニックなんかも医薬部外品に分類されますが、こういった商品の特徴は、積極的に病気を治すというより予防という意味合いの商品が多いです。
医薬部外品では発毛・育毛効果が薄いというとそんなわけではなく、それは製品の種類によってまちまちです。
育毛剤というカテゴリーを見ると、脱毛の原因は様々な要因がからみあっているので、医薬部外品は効かない、医薬品は効くなんて一概に言えない、線引きが曖昧な部分がありますね。
医薬品について
薬事法では「人または動物の身体の機能または機能に影響を及ぼす事が目的とされるもの」とあります。
厚生労働省の認可のもと製造販売しなければならないものになります。
医薬部外品に比べて、人体への影響が高いものですね。
この影響には副作用も含まれます。「医薬品の取り扱いは用法用量を守って」という注意喚起の理由はここから来ています。正しく使用しないと、きちんとした効果が期待できないばかりか、悪影響すら引き起こします。成分が強い分、もし副作用が起きた場合はその影響も大きい。
育毛剤は頭皮に直接塗布するため、もし副作用が起きた場合はかぶれや炎症などを引き起こす場合があります。もちろん脱毛の原因になることも。
医薬部外品は意外と大雑把に使ってもそんなに悪影響はないかもしれませんが、医薬品を取り扱う場合はきちんと説明書を読んで、使用方法やアレルギーとかの注意事項を読んでおくことをオススメします。
医薬品にはさらに三つに分類されます。第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品です。簡単に言ってしまえば、第一類から順番にが効果が高いということになります。
第一類医薬品は薬剤師がいなければ販売できません。例えば夜に薬局に行った場合、もし薬剤師が帰ってしまいバイトしかいなかったら、第一類医薬品は販売できません。売ってくれと言っても断られます。
医薬品に分類される育毛剤のほとんどは「第二類医薬品」か「第三類医薬品」になります。
医薬品と医薬部外品、どっちの育毛剤がいいのか?
医薬部外品と医薬品の違いは「人体への影響の強弱」といっていいでしょう。だとしたら、医薬品の育毛剤を使った方が、発毛効果は強そうですよね。
だけど、実際のところそれはちょっと違います。
「薬」と「毒」の違いってわかりますか?
凄くシンプルな解答。
薬と毒の違いは「分量」だけです。
ほとんどすべての薬は、過剰摂取すれば毒になります。
逆に毒と言われている物質も、適量を摂取すれば薬になります。
薬効成分はたくさん入っているから良い、というわけではないんですね。
そう考えてみると、医薬部外品であることや医薬品であることに、実はそんなに違いはないのです。
同様に高い育毛剤だから効くとか、安いから効かない、という事でもありません。
問題は自分の体質に合うかどうか?この一点に尽きるでしょう。
育毛剤を選ぶときは、医薬部外品だから効果がない、安い育毛剤だから効果がない、そんな先入観は捨てて、配合されている成分や効果に着目して選んでみてください。
では次に、抜け毛のリスクをはらんだ医薬品について紹介します。
抜け毛・薄毛の副作用がでるかもしれない医薬品とは?
「毒薬変じて薬となる」ということわざがあります。
これは「たとえ毒薬であっても適量を使うことで薬にもなるよ」という意味ですね。
同じことは病院で処方される薬にも、ドラッグストアで売っている薬にも言えます。
病気を治してくれる薬も、一度に大量に摂取すれば毒薬となるんですね。
特に効果の強い薬であればあるほど、服用する分量には細心の注意を払わなければなりません。
ですが、適量を服用していたとしても、毒薬のような悪影響があらわれることがあります。
これが薬の副作用です。
体質やアレルギーによっては、少量の摂取でも過敏に反応してしまい、身体に何らかの悪影響が現れます。
風邪薬で眠くなるとか、塗り薬で肌に痒みが出るとか、抗アレルギー薬で悪夢を見る、なんて副作用もあります。
さらに恐ろしいことに、ある種の薬では「脱毛」の副作用が起きることがあります。
有名なところでは抗がん剤がありますね。
ドラマなどで抗がん剤を服用した患者が大量の抜け毛にショックを受ける、なんてシーンを観たことがあるかもしれません。
抗がん剤は体内のがん細胞をピンポイントで攻撃する効果を持っていますが、頭皮にある毛根も同時に攻撃してしまうため、一時的に大量の抜け毛が発生します。
とはいえこの抜け毛は一時的なもの。毛根は攻撃を受けても死にはしないので、抗がん剤治療を中止すれば再び髪の毛が生えてきます。
このような抗がん剤と同様に、抜け毛の副作用が現れる可能性がある薬剤を紹介します。
降圧剤
α遮断剤
- ドキサゾシン
β遮断剤
- ベタキソロール
- プロプラノロール
- メトプロロール
- アロチノロール
ACE阻害剤
- エナラプリル
- イミダプリル
Ca拮抗剤
- アムロジピン
高脂血症(脂質異常症)用剤
HMG-CoA関元酵素阻害剤
- アトルバスタチン
- フルバスタチン
- プラバスタチン
フィブラート製剤
- ベザフィブラート
- クリノフィブラート
- フェノフィブラート
中枢神経系用薬
てんかん治療薬
- カルバマゼピン
- バルプロ酸ナトリウム
- トリメタジオン
- ゾニサミド
- チリウム
パーキンソニスム治療剤
- ベンセラジド
- レボドパ
- ペルゴリド
うつ病・うつ状態治療剤
- イミプラミン
- メチルフェニデート
非ステロイド性消炎鎮痛剤
- アルミノプロフェン
- アンフェナク
- イブプロフェン
- インドメタシン
- ジクロフェナク
- スリンダク
- ナプロキセン
消化器官用薬
H2受容体拮抗剤
- シメチジン
- ラニチジン
プロトンポンプインヒビター
- ランソプラゾール
- オメプラゾール
経口血糖降下剤
- グリベンクラミド
- グリクラジド
- グリメピリド
- ボグリボース
- アセトヘキサミド
痛風治療剤
- コルヒチン
- アロプリノール
骨代謝改善薬
- エチドロン酸二ナトリウム
ビタミンAと誘導体
- エトレチナート
- トレチノイン
- レチノール
- ビタミンA
内服抗真菌剤
- フルコナゾール
- イトラコナゾール
- テルビナフィン
抗結核剤
- エチオミナド
- エタンブトール
抗結核剤
- エチオナミド
- エタンブトール
抗ウイルス化学療法剤
- アンブレナビル
- ジダノシン
- エファビレンツ
- インジナビル
- ラミブジン
- ロピナビル
- ネビラピン
- アシクロビル
ホルモン剤
性ホルモン製剤
- フルオキシメステロン
- テストステロン
GnRH誘導体製剤
- ブセレリン
- ナファレリン
子宮内膜症治療剤
- ダナゾール
インターフェロン製剤
- IFNα
- IFNβ
- INFγ
緑内障・高眼圧症治療剤
- レボブノロール
- チモロール
抗甲状腺剤
- プロピルチオウラシル
- チアマゾール
潰瘍性大腸炎治療剤・抗リウマチ剤
- サラゾスルファピリジン
- メサラジン
勃起不全治療剤
- シルデナフィル
血液凝固阻止剤
- ヘパリン
- ワーファリン
参考資料:専門医が語る毛髪科学最前線
意外と身近にある抜け毛を引き起こす薬剤
以上が代表的な抜け毛・薄毛の副作用がある薬剤です。
向精神薬から糖尿病、高血圧の内服薬、塗り薬に鎮痛剤など、幅広い薬剤で抜け毛の副作用があるのがわかります。
みたことのない成分名が並んでいますが、中には私たちの身近にある薬剤もありましたね。
イブプロフェンは某有名頭痛薬に使われていますし、インドメタシンやジクロフェナクは腰痛の薬によく使われています。
意外なところではビタミンAも、その副作用に抜け毛があります。
関連記事:ビタミンAの過剰摂取が薄毛の原因に!レバーや人参は食べ過ぎ注意??
こんなにたくさん抜け毛の副作用を持った成分があるなんてなんだか怖いですが、基本的に用法・容量を守って服用すれば、副作用を恐れることはありません。
それに、万が一少しくらい抜け毛が増えたとしても、薬を飲むのを中止すればまた前のように髪の毛は生えてきます。
それよりも「抜け毛が増えるかも!?」なんて自己判断で、飲む量を減らしたり、回数を減らしたりする方が危険!絶対やってはダメです。
薬は医師の指導の上にきちんと飲むのが大切です。
もしどうしても副作用が気になるのなら、担当医と相談して薬を変えてもらいましょう。