2017年から医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」が始まります。
ネットで「セルフメディケーション税制で発毛剤や胃薬も医療費控除の対象になる」という記事を見つけたのですが、これは間違い。発毛剤や育毛剤は医療控除の対象にはなりません。
セルフメディケーション税制の概要と、発毛剤が対象にはならない理由を紹介します。
セルフメディケーション税制とは?
セルフメディケーション税制とは、その名前の通り自分自身で健康管理をすることを奨励するために始まる新しい医療費控除の制度です。
今までは1年間で10万円以上の購入した医療費や医薬品が、医療控除の対象となっていました。
ですが、セルフメディケーション税制では年間で12,000円を超えるOTC医薬品を購入した場合、その超えた分が医療控除の対象となるのです。
健康の維持増進や病気の予防への取組を積極的に行っている人を優遇しようってのが、この新しい税制の趣旨となります。
毎日健康管理に気を遣えば、全体として大きな病気が減り、医療費の削減につながるというわけですね。
そのため、このセルフメディケーション税制で医療控除を受けるには、”病気予防の取り組みを行っていること”が条件になります。
具体的には「特定健康診査」「予防接種」「定期健康診断」「健康診査」「がん検診」を受けている必要があります。これらの条件を満たしたうえで、厚生労働省が取り決めた対象となるOTC医薬品を購入した人が、セルフメディケーション税制の対象となるのです。
育毛剤や発毛剤はセルフメディケーション税制の対象にならない!!
このセルフメディケーション税制の対象となる医薬品は「スイッチOTC医薬品」と呼ばれるもの。
スイッチOTC薬品は「Over the counter」の略で、「要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品」のことを指します。
その内容は、かぜ薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬 、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬などがメイン。
いまのところ、厚生労働省のWebサイトに掲載されているセルフメディケーション税制が使える医薬品は1577品目ですが、その中に育毛剤は含まれていません。
*セルフメディケーション税制対象品目は厚生労働省のサイトで確認できます→セルフメディケーション税制対象品目一覧
育毛成分で医薬品となっているのはごくわずか
そもそも”育毛剤”のほとんどは医薬品ではありません。医薬品よりも効果が劣る「医薬部外品」なのです。
育毛・発毛効果のある医薬成分といえば…
- フィナステリド
- ミノキシジル
- 塩化カルプロニウム
この3つだけといっていいでしょう。(セファランチンは発毛効果がイマイチなので除外します)
そのため、これらの成分を使った育毛剤は医薬部外品ではありません。
フィナステリドを使った発毛剤「リアップ」は第1種医薬品です。第1種医薬品は街の薬局ですら、薬剤師がいないと買えません。夜に薬剤師が帰宅してバイトだけになったとしたら、第1種医薬品は販売不可能。強い薬効を持つため、効能や副作用の説明が必要なのです。
ミノキシジルを使った飲む育毛剤の「プロペシア」は処方箋医薬品です。これは医師の処方箋がなければ買うことができません。
塩化カルプロニウムを使った育毛剤で有名なのは「カロヤン」です。カロヤンは第3種医薬品に分類されます。薬局で薬剤師がいなくても購入できるものの、少なくとも医薬部外品ではありません。
厚生労働省のサイトを調べてみたのですが、フィナステリドもミノキシジルも塩化カルプロニウムも、セルフメディケーション税制の対象となる有効成分リストに載っていませんでした。
育毛剤や発毛剤でセフルメディケーション税制の対象となっている商品は1品もないようです。
しかしながら、可能性はゼロではありません。
対象品目については、必要に応じて2ヶ月に1回更新することを予定しているとのこと。
今のところ育毛剤や発毛剤はセルフメディケーション税制の対象ではありませんが、ひょっとしたらこれから対象になるかもしれませんね。
まとめ
円形脱毛症の治療は保険の対象ですが、薄毛治療については保険がきかない自費治療になります。美容整形などと一緒ですね。
ドラッグストアで購入した医薬品は、年間10万円以上になると医療費控除の対象になりますが、育毛剤は対象ではありません。
髪が生えてきたからといって健康になるわけではありませんし、セルフメディケーション税制の趣旨である「健康増進と病気予防」には当てはまらないのでしょう。
個人的には育毛関係の薬がセルフメディケーション税制の対象にはならないような気がするのですが…。
薄毛のせいで生活に支障が出ている!うつ病になった!そんな理由があれば医療控除の対象になる例外もあるようです。これからQOL(ライフ・オブ・クオリティ)の考え方が進歩して、薄毛・ハゲが生活の質を著しく下げているという主張が通れば、スイッチOTC薬品の対象になるかもしれませんね。
セルフメディケーション税制についての詳細は厚生労働省のサイトを確認してみてください→セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について