円形脱毛症

円形脱毛症の治療に漢方薬は効かない理由とは?

とつぜん髪の毛がゴッソリと抜けてしまう円形脱毛症ですが、その治療方法として漢方薬は有効なのでしょうか?

「市販の漢方薬を使って10円ハゲを治したい」

「刺激の強い外用薬よりも漢方を使いたい」

「皮膚科で治療しても円形脱毛症が良くならなかったので漢方を試したい」

円形脱毛症を治すために漢方を使いたいと思っている方の中でも、いろんな理由があると思います。

ネットではいろんなウソ、おおげさ、紛らわしい情報が溢れていますが、日本皮膚科学会が発表している円形脱毛症診療ガイドラインをもとにして、円形脱毛症に対する漢方薬の有用性について紹介します。

円形脱毛症に漢方薬は効くのか?

まず結論から申し上げますと、円形脱毛症の治療を目的として漢方を使うことは推奨されていません。

以下が、円形脱毛症診療ガイドラインに記載された漢方についての記述です。

推奨度:C2

推薦文:行わないほうがよい

解説:漢方薬単独の治療効果をみた臨床試験はないが、3報の症例集積報告がある。

しかし、いずれの報告も評価基準、再発の有無、併用療法との効果比較、自然治癒率をしのぐ効果があるのか、等の基本的な疑問への回答はなく、その有用性は判然としない。

参照元:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版

漢方が円形脱毛症に効くとされる明確なエビデンス(科学的根拠)はない、そのためガイドラインでは「行わないほうがよい」という判断になっています。

推奨度C2というのは2番目に低い推奨度で、「有効なエビデンスがない、或いは無効であるエビデンスがある」という内容。

つまり、円形脱毛症に漢方は限りなく無意味という判断になります。

 

でも、なぜ漢方は円形脱毛症に効かないのでしょうか?

 

では次に、ネットで調べていくつかのサイトで紹介されていた「円形脱毛症に効くとされる漢方」とその効能を紹介します。

円形脱毛症に効く5つの漢方

☆柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

ストレスを軽減させ、自律神経を安定させる効果がある。

☆桂枝加竜頭牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

ストレスを軽減させ、自律神経を安定させる効果がある。

☆加味逍遥散(かみしょうようさん)

精神不安、イライラなどの神経症状や、肩こり、冷え性などに効く。

☆半夏厚朴湯(はんげつこうぼくとう)

ストレスや不安神経症、慢性疲労に効く

☆当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

冷え性、貧血に効く。

この漢方の内容を見ると、「ストレスを軽減させる」「血行を促進させる」という2つの効能が得られることがわかります。

 

では、ストレスがなくなって血行が良くなれば円形脱毛症が治るかというと、実際のところそんなことはありません。

なぜなら、円形脱毛症の明確な発症原因は今も正確にわかっていないからです。

 

以前はストレスによって円形脱毛症が発症するとされてきましたが、現在ではそれは間違っていると考えられています。

確かにストレスが円形脱毛症のきっかけになる可能性はあるものの、髪の毛が抜けるのは免疫機能のトラブルが主な原因であるとわかってきました。

円形脱毛症は普通の加齢に伴う薄毛とは違って、花粉症やアレルギー性鼻炎のようなアレルギー症状のほうが近いみたいです。

実際、まったくストレスを感じていない子どもでも円形脱毛症になりますし、ストレスと円形脱毛症にそれほど関連性はありません。

同様に、頭皮の血行不良が円形脱毛症を引き起こすとも考えられていません。

そう考えると、先ほど紹介した漢方が円形脱毛症に何の効果も発揮しないことも当然といえるでしょう。

漢方薬が効かないとしたら、どうすれば円形脱毛症は改善するのでしょうか?

漢方以外のオススメの治療法は?

2017年度版の円形脱毛症ガイドラインでは、A評価(行うよう強く勧める)の治療法はひとつもありません。

このことが、円形脱毛症治療の難しさを物語っています。

ただ、B評価(行うよう勧める)の治療法は4つ紹介されています。

  • ステロイド局所注射療法
  • 局所免疫療法
  • ステロイド外用療法
  • かつらの使用

この4つです。

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の観点から、「カツラの着用」の推奨度が上がっています。以前はC1(行ってもよい)だったのが、2017年度のガイドラインからB評価になっているんですね。

画像参照:円形脱毛症診療ガイドライン2017年度版

特筆すべきは、漢方の使用よりも「治療をしない」という選択肢の方が推奨度が高いこと。

「治療せず経過観察のみ行う」の評価はC1(行うよう勧める)です。

ヘタに自己判断で漢方薬を使うよりも、何もせずに放置しておいた方がいいんですね。

実際、ほとんどの円形脱毛症がなにもせずとも自然治癒することが多いようです。

円形脱毛症の治療で漢方を使う場合の注意点

というわけで、漢方は円形脱毛症の治療にはオススメできないことがわかりました。

円形脱毛症の治療には具体的に3つの選択肢があります。

①ステロイド療法などの本格的な治療を行いたい場合は皮膚科を受診する。

②ウィッグやカツラを作りたいならアデランスなどに行って作ってもらう。

③何もせずに経過を見守る。

円形脱毛症を改善したいのなら、以上の3つの選択肢の中から選んだ方が無難でしょう。

 

もしどうしても漢方を試してみたいのなら、専門医に相談の上で、使う漢方を選んでもらうのが大切です。

漢方薬は薬局でもネット通販でも購入できますが、自己判断で使ってもほとんど意味はないと考えられます。

 

円形脱毛症診療ガイドラインはたくさんの臨床試験を行い、明確なエビデンスが積み重なっている治療法でないと”有効”という判断を下せません。

漢方の効果は判断が難しく、明確なエビデンスを得るのは困難。

評価は「行わない方がよい」となっていますが、100%絶対に意味がないとは言い切れないでしょう。

円形脱毛症の原因はまだまだわからないことが多くあります。ストレスや血行不良が原因で円形脱毛症になってしまったとしたら、漢方薬も有用かもしれませんね。

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