今まで強いストレスによって抜け毛や薄毛が引き起こされることはわかっていましたが、そのメカニズムについては不明でした。
そんな中、2021年4月にハーバード大学の研究者が、ストレスによって抜け毛が増えるメカニズムを特定し、ネイチャー誌に発表しました。
マウスにストレスホルモンの一種である「コルチステロン」の濃度を高めると、髪の毛の成長が止まることが確認されたのです。
(コルチステロンは人間におけるコルチゾールのようなもので、強いストレスを感じると副腎皮質から分泌されます)
髪の毛は「成長期→退行期→休止期→成長期」という一連のヘアサイクルを繰り返しながら増えていきます。
コルチステロンはこの一連のヘアサイクルのうち、休止期の期間を増やし、髪の毛の再生を阻害していることがわかりました。
成長期:髪の毛が伸びる時期。平均で2~6年ほど続く。
退行期:髪の毛の成長スピードが遅くなる時期。期間は10日~2週間くらい。
休止期:毛根の活動が完全にストップする時期。数か月休止したのち、再び成長期となり新しい髪の毛が生えてくる。
髪の毛は規則正しくヘアサイクルを繰り返して増えていきますが、その中の休止期の期間が伸びれば、全体の毛量も確実に減っていきます。
ストレスホルモンのコルチステロンは毛包幹細胞のGAS6たんぱく質の生産を抑制しており、これがヘアサイクルの乱れを引き起こすとのこと。
逆にコルチステロンの量を減らすと、再びGAS6たんぱく質が作用し、正常なヘアサイクルに戻りました。
ストレスが引き起こす薄毛については、強いストレスによって血管が収縮して毛根の健康状態が悪くなるからとか、交感神経が優位になって興奮状態が続くからなど、いろんな理由が考えられてきました。
ですが、今回の研究結果で、ストレスがよりダイレクトに毛根に悪影響を及ぼす可能性が示唆されました。
つまり育毛剤を使っていても、頭皮マッサージをしていても、慢性的に強いストレス下に置かれていると薄毛リスクは向上するということになります。
このストレスと薄毛に関する研究はマウスの実験によるもの。
マウスの発毛メカニズムは人間とほぼ同じですが、この実験がそのまま人間に当てはまるとは限りません。
ですが、ストレスと抜け毛の関係を考えるうえで、とても重要な発見であると思います。
ストレスによる薄毛・抜け毛の対策
今回の研究で、発毛に関してはGAS6たんぱく質が重要な役割を担っていることがわかりました。
今後はGAS6たんぱく質にアプローチすることで、まったく新しい薄毛改善方法が開発される可能性があります。
とはいえ、それはまだまだ先の話。
今のところは、ストレス対策をしっかりすることで薄毛を予防することしかできません。
読書や音楽、適度な運動はストレス解消になることが科学的に証明されています。
そんな風に、自分なりにストレス解消の方法を実践すれば、ストレスによる毛根のダメージも軽減されるのではないでしょうか。